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キャッシュマネジメントとは何か

5月10日
読了時間: 11分

更新日:6月8日



Eye-level view of a calculator and financial documents


― CMSは目的ではなく、資金管理を高度化するための手段である ―


企業の成長に伴う資金管理の高度化


企業が成長し、子会社や関連会社を持つようになると、資金管理は単なる「銀行口座の残高管理」では済まなくなります。


  • 親会社には資金がある一方で、別の子会社では借入が発生している。

  • ある会社では余剰資金が滞留し、別の会社では運転資金が不足している。

  • 国内では円資金を管理できていても、海外子会社を含めると、通貨、規制、金利、送金コスト、為替リスクが複雑に絡み合う。


このような状況に対応するために必要となるのが、キャッシュマネジメントです。


キャッシュマネジメントとは、企業グループ全体の資金を見える化し、資金不足、滞留、不正、為替差損などのリスクを抑えながら、必要なところに必要な資金を回し、外部借入や銀行手数料を削減して、資金効率を高める取り組みです。


キャッシュマネジメントは単に資金を集めることではなく、企業グループ全体の資金を有効に活用し、財務体質を改善し、将来の企業価値向上につなげていくための重要な取り組みです。



日本で広がった背景


日本では、1990年代から一部の先進企業でキャッシュマネジメントの取り組みが始まりました。


当時は、企業グループ内に複数の子会社がありながら、資金管理は各社ごとに行われているケースが多くありました。


そのため、グループ全体では余剰資金があるにもかかわらず、別の会社では銀行借入が発生しているという非効率が生じていました。


また、親会社から見ても、子会社の資金残高、借入状況、資金繰りの実態をタイムリーに把握しにくいという課題がありました。


こうした課題に対して、NECなど一部の大企業では、グループ各社の資金を親会社が一元的に把握し、必要に応じて資金を融通する仕組みを整え始めました。


これが、日本におけるキャッシュマネジメント導入の初期の動きです。


その後、大きな転機となったのが、2000年3月期頃からの連結決算中心の開示制度への移行です。


それまでの企業評価は、親会社単体の業績や財務内容に重点が置かれがちでした。


しかし、連結決算が重視されるようになると、投資家や金融機関は、親会社だけでなく、子会社を含めた企業グループ全体の収益力、財務体質、資金効率を見るようになりました。


これにより、企業側も「親会社だけ資金繰りが安定していればよい」という考え方では不十分になりました。


  • グループ全体で資金をどう使っているのか。

  • 余剰資金はどこにあるのか。

  • 不要な借入は発生していないか。

  • 子会社の資金繰りや不正リスクを把握できているか。


こうした点が、連結経営上の重要な管理課題として意識されるようになりました。


この流れの中で、キャッシュマネジメントは大企業を中心に本格的に導入されていきました。


単なる資金繰り管理ではなく、企業グループ全体の資金を見える化し、資金効率と財務統制を高めるための仕組みとして、CMSの導入も進んでいったのです。



国内キャッシュマネジメントとグローバルキャッシュマネジメント


キャッシュマネジメントは、大きく国内キャッシュマネジメントとグローバルキャッシュマネジメントに分けられます。


国内キャッシュマネジメントは、日本であれば円資金と国内銀行口座を中心に管理する取り組みです。


国内では、銀行口座間の資金移動やグループ内の資金貸借に関する制約が比較的少なく、円決済のインフラも整備されています。


そのため、まず国内の資金を一元的に把握し、余剰資金と不足資金をグループ内で調整することが、キャッシュマネジメントの第一歩になります。


一方、グローバルキャッシュマネジメントでは、国や地域をまたいで資金を管理します。


ここでは、通貨、金利、税制、送金規制、為替リスク、政治・経済情勢などを考慮する必要があり、国内キャッシュマネジメントに比べて、はるかに複雑です。


そのため、実務上はまず国や地域ごとの資金管理を整備し、その上でグローバル全体の最適化を図ることが重要になります。



CMSとは何か


キャッシュマネジメントを実務として支えるシステムが、CMSです。


CMSは、キャッシュ・マネジメント・システムの略で、企業グループの銀行口座、資金残高、入出金明細、資金移動、グループ内貸借、資金繰り、管理レポートなどを一元的に扱うためのシステムです。


代表的な機能としては、グループ内の余剰資金を集約し、不足している会社へ資金を回すキャッシュプーリングがあります。


また、親会社が子会社の支払業務をまとめて行う支払代行、グループ会社間の債権債務を相殺して決済件数を減らすネッティングなども、キャッシュマネジメントを高度化する重要な機能です。


CMSは、グループ各社の資金情報を集約し、親会社や財務統括部門が全体の資金状況を把握できるようにします。


その上で、キャッシュプーリング、支払代行、ネッティング、グループ内貸借、資金繰り管理などを通じて、グループ全体の資金を有効に活用します。


つまりCMSは、単なる銀行接続のためのシステムではなく、グループ全体の資金を見える化し、資金を動かし、決済を効率化し、資金管理を高度化するための基盤です。



CMSは導入して終わりではない


CMSは、キャッシュマネジメントを実現するための手段です。


しかし実務の現場では、大企業であってもCMSを導入しただけで満足し、その後の運用改善が十分に進んでいないケースが少なくありません。


残高照会や資金移動は使われていても、グループ全体の資金をどう見える化し、どこに集め、どこに配分し、どの借入やコストを削減するのか。


そこまで踏み込めていなければ、CMSはグループ全体の資金管理を高度化する仕組みではなく、財務担当者のオペレーションを省力化するだけのシステムにとどまってしまいます。



グループガバナンスとしてのCMS活用


CMSを活用するうえで重要になるのは、親会社と子会社の役割を明確にし、グループ全体で資金管理のルールを共有することです。


キャッシュマネジメントでは、子会社の資金残高、借入状況、資金繰り予定、支払状況などを親会社が適切に把握できるようにします。


これは、子会社を細かく管理するためというより、グループ全体の資金効率と財務統制を高めるためのガバナンスです。


親会社が資金情報を把握できれば、グループ内の余剰資金や不足資金を早期に確認でき、不要な外部借入の削減、資金繰りの安定、銀行手数料や為替コストの抑制につなげることができます。


また、子会社にとっても、資金需要に応じた弾力的な資金融通が可能になり、資金効率を高めることができます。


そのためには、CMSを導入するだけでなく、グループとしての資金管理方針、運用ルール、親会社と子会社の役割分担を明確にすることが欠かせません。


CMSは、グループ全体の資金情報を共有し、資金管理のガバナンスを高めるための管理基盤であり、これを活用し、グループ全体の資金管理を継続的に改善していくことが、キャッシュマネジメントの本質です。



国内CMS、グローバルCMS、TMSの役割


キャッシュマネジメントは、国内キャッシュマネジメントとグローバルキャッシュマネジメントに大別されます。


そのため、それを支援するCMSも、国内を対象とする国内CMSと、グローバルを対象とするグローバルCMSに分けて考える必要があります。


国内CMSは、日本国内の銀行口座と円資金を対象にしたCMSです。


日本国内では、円決済のインフラが整備されており、企業グループ内での資金移動や資金貸借に関する制約も比較的少ないため、国内CMSはシステムを汎用化・共通化しやすい領域です。


そのため、日本では複数の銀行やITベンダーが、国内CMSをパッケージやSaaSとして提供してきました。


日本以外の国や地域でも、地場に強い銀行やITベンダーが、それぞれの地域の法規制、決済慣行、銀行取引の実情に合わせたCMSを提供しています。


一方、グローバルCMSは、複数の国や地域にまたがる資金管理を支援するCMSです。


グローバルでは、国や経済領域ごとに、通貨、銀行制度、決済システム、送金規制、税制、金利、為替管理などが異なります。


そのため、国内CMSのように単一通貨・単一国を前提に、資金移動や資金貸借を標準化することは簡単ではありません。


また、クロスボーダーの送金では、送金手数料だけでなく、為替交換手数料、税金、規制対応など、さまざまなコストや制約が発生します。


銀行が提供するグローバルCMSは、当該銀行の支店や口座を対象にした送金、残高照会、入出金明細取得などの基盤機能に強みがあります。


しかし、多国・多銀行にまたがる流動性の最適化、為替リスクの一元管理、全世界横断のレポーティングまで、単一の銀行系CMSだけで網羅することは現実的ではありません。


そこでグローバル展開する大企業では、地域ごとに銀行系CMSを活用しながら、必要に応じて独立系TMS(独立系ベンダーが提供するTMS)を組み合わせ、グローバル全体の資金可視化、流動性管理、為替リスク管理を補完する形が取られています。

CMSとTMSの位置づけ


CMSとTMSは、どちらも企業の資金管理を支援するシステムですが、位置づけは同じではありません。


CMSは、主に銀行や銀行取引に近い領域を得意とするベンダーが提供するシステムです。


銀行口座の残高照会、入出金明細の取得、資金移動、キャッシュプーリング、支払代行、ネッティングなど、日々の銀行取引や決済実務に近い領域を支援します。


特に国内CMSや地域ごとのCMSは、その国の銀行取引、決済慣行、資金移動手段、法規制、銀行接続などに対応している点に強みがあります。


これに対してTMSは、銀行取引だけでなく、資金可視化、資金繰り、流動性管理、為替リスク管理、金利リスク管理、デリバティブ管理、グローバルレポーティングなど、より広い範囲の財務管理を支援するシステムです。


独立系TMSは機能範囲が広く、CMSの機能を包含する部分もあります。


一方で、国や地域ごとの銀行取引、決済慣行、資金移動手段、銀行接続などに依存する詳細な機能については、銀行や地域に根ざしたCMSの方が実務に適している場合もあります。


そのため、TMSが上位でCMSが下位という単純な関係ではありません。


多くの企業にとって重要なのは、CMSとTMSのどちらが優れているかではなく、国内、地域、グローバルという管理階層に応じて、それぞれのシステムをどの役割で使うかを整理することです。


国内や地域ごとの日々の資金管理や決済実務はCMSで支え、グローバル全体の資金可視化、流動性管理、為替リスク管理、レポーティングはTMSで補完する。


このように役割を分けて考えることが、実務上は重要になります。



中堅・中小企業にも必要なキャッシュマネジメント


キャッシュマネジメントは、大企業だけのものではありません。


中堅・中小企業においても、子会社や関連会社を持ち、グループ経営が必要になれば、資金管理の高度化は重要な課題になります。


大規模なCMSやTMSを導入しなくても、まずはグループ各社の銀行口座、資金残高、借入状況、資金繰り予定を見える化するだけで、改善できることは少なくありません。


どこに資金があり、どこで資金が不足しているのか。


不要な借入はないか。


支払業務や銀行手数料に無駄はないか。


子会社の資金繰りや不正リスクを把握できているか。


こうした点を確認することが、キャッシュマネジメントの第一歩になります。


企業が成長し、グループ経営が必要になったとき、従来の資金管理だけでは不十分になります。


その段階で求められるのが、キャッシュマネジメントへの発展です。



キャッシュマネジメント研究所の考え方


キャッシュマネジメントは、大企業だけのものではありません。


中堅・中小企業にとっても、キャッシュマネジメントを高度化することは、成長を支える重要な力になります。


しかし現実には、大手銀行や大手コンサルティング会社の支援は、大企業や大規模案件に向きやすく、中堅・中小企業には専門的な助言が十分に届きにくい面があります。


当研究所は、まさにその領域を重視しています。


中堅・中小企業が、自社の規模や成長段階に応じて、無理なく、実務に合った形でキャッシュマネジメントを高度化していくこと。


その支援を行うことが、当研究所の重要な役割です。


キャッシュマネジメントのやり方や優先順位は、企業規模によって異なります。


大規模なCMSやTMSを最初から導入することが、必ずしも正解とは限りません。


まずは、グループ各社の銀行口座、資金残高、借入状況、資金繰り予定を把握すること。


次に、不要な借入、資金の滞留、支払業務の重複、銀行手数料の無駄、資金管理上のリスクを確認すること。


そのうえで、自社に合った業務設計、管理ルール、システム活用を段階的に整えていくことが重要です。


無策のままでは、資金は見えにくくなり、借入や手数料の無駄も残り、成長に使えるはずの資金が十分に活かされません。


キャッシュマネジメント研究所では、企業の成長段階に応じて、資金管理の現状把握、課題整理、業務設計、CMS導入、運用定着までを支援していきます。


キャッシュマネジメントを、企業の成長を支える力にする


それが、私たちの基本的な考え方です。

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